イアソン pixiv。 #FGO #イアソン(Fate) イアソンの話

#イアソン(Fate) #Fate/GrandOrder その奇跡を彼女は望んでいた 前

イアソン pixiv

「ケンタウロスの馬蔵」 ノウム・カルデアの廊下で。 つい先日召喚されたばかりのアキレウスは確かにそう聞いた。 まぎれもなくそれはケイローンを侮辱した言葉であり、アキレウスを激怒させるに充分値する言葉であった。 廊下を走り抜け、侮辱した男の元へ行く。 兄弟子だ。 兄弟子が侮辱したのだ。 ケイローンと話していたらしい兄弟子……イアソンの胸ぐらを掴み、アキレウスは彼を睨んだ。 「アキレウスッ……」 「イアソン、あんた、今先生を侮辱したな」 ケイローンの声が聞こえないような、そんな雰囲気のままアキレウスはギリギリと歯を軋る。 「……だからなんだというのだ」 「テメェッ……!」 「簡潔でわかりやすい授業だったさ。 ただ、"場所"のことを言っただけだ」 場所については、まあ、確かに。 と、ケイローン自身納得はしている。 だが、アキレウスは許せない。 「ヘラクレスがいなきゃ、なんにもできねぇお前が! 先生を! 侮辱するな!」 イアソンは何も言わない。 この手の言葉は聞き飽きているからだ。 実際、ヘラクレスの強さは本物だ。 ヘラクレス頼りと言われれば納得もする。 完全に完璧にヘラクレスにべったり、というわけでもないが。 聞き飽きてはいるが、不愉快に変わりはなく。 よく回る舌で思い付く限りの罵言を浴びせようと考え、口を開きかける。 だが、アキレウスが次から次へと叫ぶように暴言を撒き散らし、イアソンを壁へと追いやる。 「っ、」 「アキレウス、いい加減に」 「先生は黙ってくれ!!」 もはやバーサーカー。 誰の話も聞く気がない。 このままではケイローンも浮かばれない。 未だに殴り付けないのはなけなしの理性か。 とにもかくにも、と思ったが瞬間。 イアソンは、頬が破裂したような痛みに襲われた。 口の中が鉄臭く、じんじんと痛む。 我慢した方か。 と、思いつつ、イアソンはアキレウスを睨んだ。 そして、口を開いた。 「……そういえば前から思っていたんだが」 「あ"?」 それは、アキレウスにとっては火に油だった。 ケイローンですら閉口した。 「惚れた女の実兄の死体を辱しめたお前は、"祖父"そっくり、だったな」 [newpage] シュミレーターから帰り、ヘラクレスは何かを感じ取ったのか、のっしのっしと。 できるだけ急ぎつつ、廊下を歩いていった。 「ヘラクレス?」 何やら焦っていた。 マスターである立香はヘラクレスについていった。 共にシュミレーターにいたアスクレピオス、アタランテ、ヘクトールもついていく。 なんとなく、嫌な予感がしたからだ。 現場では、ギャラリーが少し。 エルキドゥが鎖でアキレウスを羽交い締めにし、ケイローンと超人オリオンがイアソンを抑えていた。 「な、なななななにごと!?」 「怪我人おおいに歓迎だが……」 狼狽える立香を尻目に、アスクレピオスが訝しげな顔をする。 「あ、マスター!」 「キャスニキ! なにが!?」 二人の間に入り、落ち着けと言っていた最古参に話を聞く。 「オレもよくはわからねぇんだよ! 廊下が騒々しかったから来てみると二人で殴り合いの大喧嘩! ケイローンも少し巻き込まれ! アキレウスを抑えんのに神性特攻持ちのエルキドゥを呼んだ! イアソンはとりあえず近くにいたオリオンに頼んだ! わけわかんねぇ!」 「詳細をありがとう!」 だが、原因は不明だ。 まあ、なんとなく。 なんとなくではあるがイアソンが地雷を踏んだか。 あるいはアキレウスがイアソンの気に障ることを言ったか、やったか。 「……ヘラクレスも浮かばれねぇなぁ、こんな奴に! いいように使われてよ!」 プツン。 何かがキレた。 立香には確かに聞こえた。 アタランテがアキレウスを叩く。 「……頭を冷やせっ!」 アタランテか? いや、違う。 静かに。 立香はイアソンを見た。 アキレウスに本気で殴られたのか、頬が腫れている。 イアソンの顔を、みるのを、立香は躊躇った。 「お前、今。 ヘラクレスを、ヘラクレスを侮辱したのか」 「イアソン」 オリオンがぐっ、と腕に力を入れる。 「お前だってケイローン先生を侮辱しただろ」 「イアソン! アキレウスも控えなさい!」 聞き分けのない教え子達に、ケイローンは叱るように声を出す。 「汝達は頭を冷やせ!」 アタランテも叫ぶが二人は収まる気配がない。 「オレの侮辱は許さない。 ……だが、アルゴノーツの侮辱は……ヘラクレスの侮辱は! もっと許さん!!」 「はい! お兄さん通ります!」 カン! と杖を叩く音がした。 途端、アキレウスとイアソンは力が抜けたように倒れた。 「……寝てるね」 エルキドゥが呟く。 花の魔術師マーリンが溜め息を吐く。 「やれやれ……。 ……これでいいかな?」 「ああ。 眠らせた方が早い」 どうやらヘクトールがマーリンを呼びに行ったらしい。 「イアソンは僕が診る。 アキレウスの方はサンソンに引き渡せ。 病室は別だ」 「アスクレピオス……」 「……僕もアルゴノーツだ。 ……あの船旅には、多少なりとも思うところがある」 ヘラクレスはイアソンを担ぎ、アスクレピオスと共に去って行った。 「……あ、エルキドゥ。 ごめんね。 サンソンのところにアキレウスを頼める?」 「お安いご用さ」 エルキドゥは鎖でぐるぐる巻きにしたアキレウスを担ぎ、去って行った。 「……オジサン、イアソンんとこに行くね」 「では、私は小僧のところに行こう」 「マスター」 「……まとめれてないね、ごめんね……」 キャスターのクー・フーリンに泣き付きそうになるのを堪え、立香はケイローンに事の経緯を聞いた。 ギャラリーのサーヴァント達は、立香を落ち着かせようと色々と励ましたりした。 [newpage] 「オレは謝らん。 絶対にだ」 「それは結構。 ですが、マスターから謹慎令が出ましたので、しばらくは安静に。 謹慎が解くまでの間はシュミレーター訓練も禁止ですので」 「……チッ」 「舌打ちするな」 ベッドの上でアキレウスは不機嫌な顔を隠さなかった。 サンソンが診た限りでは放っておけば完治するものばかりだったが、喧嘩相手が女神ヘラの加護を受けているということで油断は禁物だと判断した。 「姐さんも、あいつの味方か」 「……アルゴノーツの侮辱は、私への侮辱でもある」 「そんなつもりはっ」 「……」 「っ……」 アタランテに見つめられ、アキレウスはばつが悪いような顔をし、俯いた。 「……第三特異点の記録をみたか?」 「! ……ああ」 ちょうど、記録をみた後に聞こえた。 そう続けると、アタランテは溜め息を吐いた。 「ハァ……。 ……少し、アルゴノーツの話をしよう」 「いや、アルゴーの話は」 「冒険譚ではない。 ……私が、なぜ船に乗ったかだ」 「!!」 静かに、サンソンが茶を出す。 アタランテが短く礼を言うと、彼は微笑んだ。 「私も聞いていいのですか?」 「ああ。 たいした話ではないからな」 目を細め、アタランテは記憶を辿る。 口の上手い男が、己が最も忌み嫌う人種が、夢想を語ったのだ。 国について。 「言ったのだ。 理想郷のような国をつくると。 すべての民が満ち足りた、私が願う、すべての子供の幸福も組み込んだ国をつくると。 口八丁だ。 出任せだ。 そうわかっていた。 強い船員が欲しいのはわかっていた」 「じゃあ、なんで姐さんは……」 「……笑わなかったのだ」 「へ……」 「私の、非現実的な。 あまりにも夢物語な、世界への願いを、あの男は聞いてなお、笑わなかった」 大抵は嘲笑され、否定され、バカにされる夢物語を。 イアソンは真剣に聞き、笑わなかった。 「『私が国王となったら、子供も幸せな国にするとも。 ケイローン先生の授業よりもレベルの高い教育を行き届かせ、子供の幸せな声で満ち溢れるような、そんな国を』……私より、夢物語だと思ったさ」 そんな国をつくりたいから、力を貸してくれ。 そう言われた。 言われたならば、貸す他ない。 だからアタランテは船に乗ると決めたのだ。 「魂レベルで腐りきってはいるが、そんな国をつくりたいという奴の気持ちは本物だったのだ。 ……酒の席で、酔ったら必ず演説するように毎回言っていたからな」 「……」 アキレウスはカップを見つめる。 だから、父親も船に乗ったのだろうかと思いつつ、一口茶を飲む。 「ヘラクレスの、奴への感情は大きい。 第三特異点のように間違っている、とわかっていても味方したように」 それは、イアソンがはじめて。 ヘラクレスを人間として扱ったからだ。 対等な人間として接したからだ。 「……私は、叱るためにマスター達に付いた。 アルゴノーツの皆はなんだかんだあいつに甘いからな」 天然の人たらし。 それがイアソンだ。 彼の物語は、今も語り継がれる。 アキレウスは遠い記憶を漁る。 幼い頃、ケイローンに連れられアルゴー船の出航を見送ったことがある。 「……あ」 「? どうした」 あの時の、薄れた記憶。 今も霞がかっているが確かに覚えている。 あの時。 兄弟子は確かに、誇らしげな顔をしていたのだ。 (……あれは、本心じゃない イアソンはひねくれた性格だから。 だから、ああいう言い方をするのだと。 アキレウスはようやく気付いた。 ……許しはしないが。 「……にしても、ギリシャの英雄は友情を優先したがる傾向があるようですね」 サンソンが呟くとアキレウスは冷えた頭で少し考える。 「あー……。 ……まあ、時代もあんだろ」 とりあえず、謹慎が解けたら話を聞いてみよう。 そんなことを思いながら、アキレウスはカップの茶を飲み干した。 [newpage] 「オレは謝らんからな!」 「それは結構。 じゃあ寝てろ」 「言われなくとも!」 アスクレピオスに診てもらい、謹慎令が出たイアソンはふて寝した。 ヘクトールが困った顔で頬を掻くと、イアソンは溜め息を吐いた。 「ハァ。 ……お前には悪かったな」 「? なんのことですかな?」 「あいつに浴びせた暴言のなかに、お前を侮辱するものが混じっていた」 素直に謝るイアソンにヘクトールは驚きつつ、苦笑した。 「そうかい」 今更何をどう言われようが、死人なのだから意味などない。 二人の揺るぎない絆、とでも言おうか。 「にしても、アスクレピオスが進んでイアソンの面倒をみるなんてね」 「アキレウスより身体を理解しているからな。 それにいかんせん、あのクソ爺の孫だ。 いくらなんでもイアソンでは分が悪い」 「お前もそうだろうが」 イアソンがそう言うと、ヘラクレスが普段より険しい顔をした。 今のに他意はない」 何やら抗議したらしい。 イアソンが謝罪すると、ヘラクレスの顔が幾分か柔らかくなる。 「はは。 ……オジサンも英雄の括りに入れられてるけど、こういう仲間はいなかったからねぇ」 「仲間、といえばイアソンとお前はある意味仲間だ。 クソ太陽神の加護的な意味でな。 僕は少し違うから外させてもらうが」 皮肉混じりにアスクレピオスが吐き捨てると、ヘクトールは苦笑いをした。 イアソンは思い出すように 「そういえば、アポロン神の加護が与えられた時、お前顔が凄かったもんな……」 と言った。 するとアスクレピオスは乾いた笑みを浮かべた。 「ハハハハ。 ……それは無邪気に。 「……友情、か……」 「……そうだな。 ……イアソンは、ロクデナシだ。 クズだ。 人間として敬うに値しない、自分勝手な、あまりにも人間らしい人間だ」 「お前オレのこと嫌いだろ!」 「いいや?」 フッ、と笑い、アスクレピオスは腕を組む。 「むしろ好ましいが? 患者としてはこの上なく良い患者だ。 すべての愚患者に見習わしたいくらいにな」 「バカにしてるだろぉぉ!」 アルゴノーツ。 ヘクトールはついこの前の、酒の席でのことを思い出した。 賢王が「羨ましいものよなぁ……」と、羨望の眼差しを向けたのだ。 酒の席で。 なぜかイアソンに群れていき、そこで騒ぐアルゴノーツをみて。 メディアとの破局は、まあ様々な要因 主に女神 のせいだが、イアソンを知れば知るほど。 人間としてはどうしようもない奴だが、そのカリスマは本当なのだと思い知る。 「アキレウスには謝罪しなくてもいいが、ケイローン教授には謝罪しろ。 どう考えても、一番の被害者だ」 「むっ……。 ……そうだな」 「そういえば、なんで喧嘩してたの?」 まるで子供に諭すような言い方だったが、イアソンは普通に。 ケロリとヘクトールに答えた。 「教授に授業の感想を聞かれたから、答えた。 それだけだ」 言い方が悪かったというのが手に取るようにわかったヘクトールは、ひきつった笑みを浮かべた。 実際イアソンは『簡潔且つ簡単なものばかりでした。 ケンタウロスの馬蔵でしたけど』と言ったのだ。 否、言ってしまった。 ケイローンはイアソンの性格をよく知っているので何も言わなかった。 彼なりの賛辞だとわかっているからだ。 「まあ、お前さんはマスターにも謝らんとな」 「わかっている!」 「お静かに」 ベシッ!とアスクレピオスがカルテをイアソンの頭に叩きつけた。 ヘラクレスは懐かしむようにそれを見ていた。

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#FGO #イアソン(Fate) アトランティスを越えた先、従兄弟同士語り合う

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「ケンタウロスの馬蔵」 ノウム・カルデアの廊下で。 つい先日召喚されたばかりのアキレウスは確かにそう聞いた。 まぎれもなくそれはケイローンを侮辱した言葉であり、アキレウスを激怒させるに充分値する言葉であった。 廊下を走り抜け、侮辱した男の元へ行く。 兄弟子だ。 兄弟子が侮辱したのだ。 ケイローンと話していたらしい兄弟子……イアソンの胸ぐらを掴み、アキレウスは彼を睨んだ。 「アキレウスッ……」 「イアソン、あんた、今先生を侮辱したな」 ケイローンの声が聞こえないような、そんな雰囲気のままアキレウスはギリギリと歯を軋る。 「……だからなんだというのだ」 「テメェッ……!」 「簡潔でわかりやすい授業だったさ。 ただ、"場所"のことを言っただけだ」 場所については、まあ、確かに。 と、ケイローン自身納得はしている。 だが、アキレウスは許せない。 「ヘラクレスがいなきゃ、なんにもできねぇお前が! 先生を! 侮辱するな!」 イアソンは何も言わない。 この手の言葉は聞き飽きているからだ。 実際、ヘラクレスの強さは本物だ。 ヘラクレス頼りと言われれば納得もする。 完全に完璧にヘラクレスにべったり、というわけでもないが。 聞き飽きてはいるが、不愉快に変わりはなく。 よく回る舌で思い付く限りの罵言を浴びせようと考え、口を開きかける。 だが、アキレウスが次から次へと叫ぶように暴言を撒き散らし、イアソンを壁へと追いやる。 「っ、」 「アキレウス、いい加減に」 「先生は黙ってくれ!!」 もはやバーサーカー。 誰の話も聞く気がない。 このままではケイローンも浮かばれない。 未だに殴り付けないのはなけなしの理性か。 とにもかくにも、と思ったが瞬間。 イアソンは、頬が破裂したような痛みに襲われた。 口の中が鉄臭く、じんじんと痛む。 我慢した方か。 と、思いつつ、イアソンはアキレウスを睨んだ。 そして、口を開いた。 「……そういえば前から思っていたんだが」 「あ"?」 それは、アキレウスにとっては火に油だった。 ケイローンですら閉口した。 「惚れた女の実兄の死体を辱しめたお前は、"祖父"そっくり、だったな」 [newpage] シュミレーターから帰り、ヘラクレスは何かを感じ取ったのか、のっしのっしと。 できるだけ急ぎつつ、廊下を歩いていった。 「ヘラクレス?」 何やら焦っていた。 マスターである立香はヘラクレスについていった。 共にシュミレーターにいたアスクレピオス、アタランテ、ヘクトールもついていく。 なんとなく、嫌な予感がしたからだ。 現場では、ギャラリーが少し。 エルキドゥが鎖でアキレウスを羽交い締めにし、ケイローンと超人オリオンがイアソンを抑えていた。 「な、なななななにごと!?」 「怪我人おおいに歓迎だが……」 狼狽える立香を尻目に、アスクレピオスが訝しげな顔をする。 「あ、マスター!」 「キャスニキ! なにが!?」 二人の間に入り、落ち着けと言っていた最古参に話を聞く。 「オレもよくはわからねぇんだよ! 廊下が騒々しかったから来てみると二人で殴り合いの大喧嘩! ケイローンも少し巻き込まれ! アキレウスを抑えんのに神性特攻持ちのエルキドゥを呼んだ! イアソンはとりあえず近くにいたオリオンに頼んだ! わけわかんねぇ!」 「詳細をありがとう!」 だが、原因は不明だ。 まあ、なんとなく。 なんとなくではあるがイアソンが地雷を踏んだか。 あるいはアキレウスがイアソンの気に障ることを言ったか、やったか。 「……ヘラクレスも浮かばれねぇなぁ、こんな奴に! いいように使われてよ!」 プツン。 何かがキレた。 立香には確かに聞こえた。 アタランテがアキレウスを叩く。 「……頭を冷やせっ!」 アタランテか? いや、違う。 静かに。 立香はイアソンを見た。 アキレウスに本気で殴られたのか、頬が腫れている。 イアソンの顔を、みるのを、立香は躊躇った。 「お前、今。 ヘラクレスを、ヘラクレスを侮辱したのか」 「イアソン」 オリオンがぐっ、と腕に力を入れる。 「お前だってケイローン先生を侮辱しただろ」 「イアソン! アキレウスも控えなさい!」 聞き分けのない教え子達に、ケイローンは叱るように声を出す。 「汝達は頭を冷やせ!」 アタランテも叫ぶが二人は収まる気配がない。 「オレの侮辱は許さない。 ……だが、アルゴノーツの侮辱は……ヘラクレスの侮辱は! もっと許さん!!」 「はい! お兄さん通ります!」 カン! と杖を叩く音がした。 途端、アキレウスとイアソンは力が抜けたように倒れた。 「……寝てるね」 エルキドゥが呟く。 花の魔術師マーリンが溜め息を吐く。 「やれやれ……。 ……これでいいかな?」 「ああ。 眠らせた方が早い」 どうやらヘクトールがマーリンを呼びに行ったらしい。 「イアソンは僕が診る。 アキレウスの方はサンソンに引き渡せ。 病室は別だ」 「アスクレピオス……」 「……僕もアルゴノーツだ。 ……あの船旅には、多少なりとも思うところがある」 ヘラクレスはイアソンを担ぎ、アスクレピオスと共に去って行った。 「……あ、エルキドゥ。 ごめんね。 サンソンのところにアキレウスを頼める?」 「お安いご用さ」 エルキドゥは鎖でぐるぐる巻きにしたアキレウスを担ぎ、去って行った。 「……オジサン、イアソンんとこに行くね」 「では、私は小僧のところに行こう」 「マスター」 「……まとめれてないね、ごめんね……」 キャスターのクー・フーリンに泣き付きそうになるのを堪え、立香はケイローンに事の経緯を聞いた。 ギャラリーのサーヴァント達は、立香を落ち着かせようと色々と励ましたりした。 [newpage] 「オレは謝らん。 絶対にだ」 「それは結構。 ですが、マスターから謹慎令が出ましたので、しばらくは安静に。 謹慎が解くまでの間はシュミレーター訓練も禁止ですので」 「……チッ」 「舌打ちするな」 ベッドの上でアキレウスは不機嫌な顔を隠さなかった。 サンソンが診た限りでは放っておけば完治するものばかりだったが、喧嘩相手が女神ヘラの加護を受けているということで油断は禁物だと判断した。 「姐さんも、あいつの味方か」 「……アルゴノーツの侮辱は、私への侮辱でもある」 「そんなつもりはっ」 「……」 「っ……」 アタランテに見つめられ、アキレウスはばつが悪いような顔をし、俯いた。 「……第三特異点の記録をみたか?」 「! ……ああ」 ちょうど、記録をみた後に聞こえた。 そう続けると、アタランテは溜め息を吐いた。 「ハァ……。 ……少し、アルゴノーツの話をしよう」 「いや、アルゴーの話は」 「冒険譚ではない。 ……私が、なぜ船に乗ったかだ」 「!!」 静かに、サンソンが茶を出す。 アタランテが短く礼を言うと、彼は微笑んだ。 「私も聞いていいのですか?」 「ああ。 たいした話ではないからな」 目を細め、アタランテは記憶を辿る。 口の上手い男が、己が最も忌み嫌う人種が、夢想を語ったのだ。 国について。 「言ったのだ。 理想郷のような国をつくると。 すべての民が満ち足りた、私が願う、すべての子供の幸福も組み込んだ国をつくると。 口八丁だ。 出任せだ。 そうわかっていた。 強い船員が欲しいのはわかっていた」 「じゃあ、なんで姐さんは……」 「……笑わなかったのだ」 「へ……」 「私の、非現実的な。 あまりにも夢物語な、世界への願いを、あの男は聞いてなお、笑わなかった」 大抵は嘲笑され、否定され、バカにされる夢物語を。 イアソンは真剣に聞き、笑わなかった。 「『私が国王となったら、子供も幸せな国にするとも。 ケイローン先生の授業よりもレベルの高い教育を行き届かせ、子供の幸せな声で満ち溢れるような、そんな国を』……私より、夢物語だと思ったさ」 そんな国をつくりたいから、力を貸してくれ。 そう言われた。 言われたならば、貸す他ない。 だからアタランテは船に乗ると決めたのだ。 「魂レベルで腐りきってはいるが、そんな国をつくりたいという奴の気持ちは本物だったのだ。 ……酒の席で、酔ったら必ず演説するように毎回言っていたからな」 「……」 アキレウスはカップを見つめる。 だから、父親も船に乗ったのだろうかと思いつつ、一口茶を飲む。 「ヘラクレスの、奴への感情は大きい。 第三特異点のように間違っている、とわかっていても味方したように」 それは、イアソンがはじめて。 ヘラクレスを人間として扱ったからだ。 対等な人間として接したからだ。 「……私は、叱るためにマスター達に付いた。 アルゴノーツの皆はなんだかんだあいつに甘いからな」 天然の人たらし。 それがイアソンだ。 彼の物語は、今も語り継がれる。 アキレウスは遠い記憶を漁る。 幼い頃、ケイローンに連れられアルゴー船の出航を見送ったことがある。 「……あ」 「? どうした」 あの時の、薄れた記憶。 今も霞がかっているが確かに覚えている。 あの時。 兄弟子は確かに、誇らしげな顔をしていたのだ。 (……あれは、本心じゃない イアソンはひねくれた性格だから。 だから、ああいう言い方をするのだと。 アキレウスはようやく気付いた。 ……許しはしないが。 「……にしても、ギリシャの英雄は友情を優先したがる傾向があるようですね」 サンソンが呟くとアキレウスは冷えた頭で少し考える。 「あー……。 ……まあ、時代もあんだろ」 とりあえず、謹慎が解けたら話を聞いてみよう。 そんなことを思いながら、アキレウスはカップの茶を飲み干した。 [newpage] 「オレは謝らんからな!」 「それは結構。 じゃあ寝てろ」 「言われなくとも!」 アスクレピオスに診てもらい、謹慎令が出たイアソンはふて寝した。 ヘクトールが困った顔で頬を掻くと、イアソンは溜め息を吐いた。 「ハァ。 ……お前には悪かったな」 「? なんのことですかな?」 「あいつに浴びせた暴言のなかに、お前を侮辱するものが混じっていた」 素直に謝るイアソンにヘクトールは驚きつつ、苦笑した。 「そうかい」 今更何をどう言われようが、死人なのだから意味などない。 二人の揺るぎない絆、とでも言おうか。 「にしても、アスクレピオスが進んでイアソンの面倒をみるなんてね」 「アキレウスより身体を理解しているからな。 それにいかんせん、あのクソ爺の孫だ。 いくらなんでもイアソンでは分が悪い」 「お前もそうだろうが」 イアソンがそう言うと、ヘラクレスが普段より険しい顔をした。 今のに他意はない」 何やら抗議したらしい。 イアソンが謝罪すると、ヘラクレスの顔が幾分か柔らかくなる。 「はは。 ……オジサンも英雄の括りに入れられてるけど、こういう仲間はいなかったからねぇ」 「仲間、といえばイアソンとお前はある意味仲間だ。 クソ太陽神の加護的な意味でな。 僕は少し違うから外させてもらうが」 皮肉混じりにアスクレピオスが吐き捨てると、ヘクトールは苦笑いをした。 イアソンは思い出すように 「そういえば、アポロン神の加護が与えられた時、お前顔が凄かったもんな……」 と言った。 するとアスクレピオスは乾いた笑みを浮かべた。 「ハハハハ。 ……それは無邪気に。 「……友情、か……」 「……そうだな。 ……イアソンは、ロクデナシだ。 クズだ。 人間として敬うに値しない、自分勝手な、あまりにも人間らしい人間だ」 「お前オレのこと嫌いだろ!」 「いいや?」 フッ、と笑い、アスクレピオスは腕を組む。 「むしろ好ましいが? 患者としてはこの上なく良い患者だ。 すべての愚患者に見習わしたいくらいにな」 「バカにしてるだろぉぉ!」 アルゴノーツ。 ヘクトールはついこの前の、酒の席でのことを思い出した。 賢王が「羨ましいものよなぁ……」と、羨望の眼差しを向けたのだ。 酒の席で。 なぜかイアソンに群れていき、そこで騒ぐアルゴノーツをみて。 メディアとの破局は、まあ様々な要因 主に女神 のせいだが、イアソンを知れば知るほど。 人間としてはどうしようもない奴だが、そのカリスマは本当なのだと思い知る。 「アキレウスには謝罪しなくてもいいが、ケイローン教授には謝罪しろ。 どう考えても、一番の被害者だ」 「むっ……。 ……そうだな」 「そういえば、なんで喧嘩してたの?」 まるで子供に諭すような言い方だったが、イアソンは普通に。 ケロリとヘクトールに答えた。 「教授に授業の感想を聞かれたから、答えた。 それだけだ」 言い方が悪かったというのが手に取るようにわかったヘクトールは、ひきつった笑みを浮かべた。 実際イアソンは『簡潔且つ簡単なものばかりでした。 ケンタウロスの馬蔵でしたけど』と言ったのだ。 否、言ってしまった。 ケイローンはイアソンの性格をよく知っているので何も言わなかった。 彼なりの賛辞だとわかっているからだ。 「まあ、お前さんはマスターにも謝らんとな」 「わかっている!」 「お静かに」 ベシッ!とアスクレピオスがカルテをイアソンの頭に叩きつけた。 ヘラクレスは懐かしむようにそれを見ていた。

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#FGO #イアソン(Fate) イアソンの話

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食堂でひとり、コーヒーを啜る。 苦味と酸味のバランスが丁度良いそれは、生前は口にしたことが無かった代物だ。 かぐわしい香りが湯気と共にあたりに広がるが、口にする主の顔は陰鬱なものだった。 「あー…面倒、面倒すぎる。 これがキャスターやアーチャーだったらアスクレピオスとアタランテの奴にちゃちゃっと片付けてもらう、んだが…」 大きい溜め息をついて、目の前の黒いバインダーに挟まれた資料に目を向ける。 セイバー回覧板。 大きい字で書いてあるそれは、セイバークラスのサーヴァントに向けられたものであり、彼…イアソンも例外では無かった。 「第一オレはライダーとかランサーとか、もっと的確なクラスがあるってーの。 なんでセイバーなんだよ…」 ぶつぶつ文句を言いながら資料に目を通せば、素材のことやクエストのこと、そしてセイバークラス同士の鍛練の日程についてなど、事細かに記載されている。 鍛練などしたくはない、と顔を歪めていると、ふと前方に影が落ちた。 「イアソン、少しだけ良いか?」 目の前にいたのは濃い紫色の鋼鉄製のスーツに身を包んだ男、オデュッセウス。 イアソンの従兄弟でもある間柄だが生前は面識が無く、会うのはサーヴァントになってからだった。 「なんだ、オレは今忙しいんだが?」 「ははは。 なに、ほんの少しだけ話したらすぐ離席させてもらうさ」 イアソンの断りもやんわりと受け流し、椅子に腰掛け、机を挟んで向かい合う二人。 彼は整いながらも威厳のある顔立ちをしている故に、一見冷徹な印象を与えがちだがその物腰の柔らかさから、笑みを浮かべることが多い。 事実、今でも僅かな微笑を浮かべている。 そんな彼をちらりと見て、迷惑そうな声色でイアソンが言う。 「5分だ。 それ以上は話は聞かん」 「構わない。 ただ、聞き流すだけでも良い」 そしてまるで自分自身を落ち着かせるように一呼吸置いて、オデュッセウスが口を開いた。 「…迷惑をかけて、すまなかったな」 突然の詫びの言葉にも、何も言わず回覧板に目を落としながらコーヒーを啜る。 そんなイアソンの様子に、オデュッセウスは催促されているのだろうと察し言葉を続けた。 「俺はアルテミスの矢から逃れたものの、異聞帯の俺に捕まえられた。 そして敗北し消滅した。 その後、異聞帯の俺がマスターやお前達を相当追い詰めた…これはカルデアのデータベースで見た情報だがな」 異聞帯・アトランティスの海で、当初オデュッセウスはイアソン達と行動していた。 しかし襲いかかるアルテミスの猛攻により頼みの綱だったヘラクレスは十二の試練を使い果たし脱落、命からがら生き延びたサーヴァントはばらばらに散らばってしまったのだ。 この時に、イアソンとオデュッセウスも互いに行方が解らなくなった。 その後オデュッセウスは、単身で汎人類史のサーヴァント及びカルデアのマスターを探していたが、運悪く異聞帯の自分自身に見つかり捕らえられ、知識を引き出され、そして討たれた。 「俺にはアテナの加護があるが、それでも奴には及ばなかった。 クリロノミアだったか?あれは凄まじい効果を発揮していた。 部下である兵達も異常な強さだった。 …俺のことだ、交渉も降伏も許さず、逃げ場など与えず、確実に仕留める策を練ったそうだな。 死体が見つかるまでは攻撃を止めないと。 」 軍師であるオデュッセウスが次に敵軍がどのように動くか予測計算し、そして徹底的に勝利のため手を尽くすことは当然である。 事実、異聞帯のオデュッセウスはそうだった。 ラミアで包囲され完全に逃げ場を無くしたシャドウ・ボーダーに向けて、アルテミスの矢を放った。 それだけではない。 確実に死んだのか、残留物の確認まで行うほどの徹底っぷりだった。 あの猛攻から逃れたのはまさに奇跡としか言えないだろう。 「俺が不甲斐ないばかりに本当にすまなかった。 あの海にいた全ての者に心から謝罪を、そして…俺を倒してくれたことに感謝を。 …ただ、それが言いたかった。 ありがとう、イアソン。 我が従兄弟殿」 今まで回覧板に目を向けていたイアソンが顔をあげると、ひどく優しい顔で頬笑むオデュッセウスがそこに居たため思わず舌打ちをした。 勝手に謝って勝手に満足しているような様がひどく気に入らなくて、段々と腹が立ってきたのだ。 「なーにが『ありがとう、イアソン。 こっちはマジで大変だったんだぞ!そもそもオレだってあんなことしたくなかったわ!」 頬杖をついて思いっきり指を指すと、急に声を大きくしたイアソンの勢いに少し驚いたオデュッセウスが何か言おうとしたが、すかさず先制をとった。 「オレもな、元々はあんなことやるつもりはなかったんだ!ヘラクレス…失った友を想いながら酒飲んで、いつか来る消滅の瞬間を穏やかに待っていた。 それなのにコルデーがマスターを連れてきちまったもんだから全てが台無しだ!おかげで戦闘に駆り出される羽目になった!オレは前線になんか出たくなかったっつーの!怖いし痛いし最悪だったわ!」 「そ、そうだったのか…」 「そうだよ!ああなったのは成り行きで!異聞帯でのお前が何しようとどうでも良い話になるはずだった…ん?そういえば、コルデーを召喚したのはお前だったよな?」 「あ、ああ、俺自身ではなく異聞帯の俺だが…」 たじろぐオデュッセウスを見て、今度はニヤリとするイアソン。 コロコロと変わる表情は、まるでいたずら好きの幼い子供のようだ。 「ハッハッハ!コルデーも大概役立たずだったが酒のつまみの腕は悪くなかったし、お前を仕留めたのもあいつだ、まあ良い働きをした。 しかし自分が召喚したサーヴァントに不意を突かれるとは、かのトロイア戦争の軍師殿も随分詰めが甘いんじゃないのか?」 皮肉たっぷりの言葉に、オデュッセウスは楽しそうに笑って答えた。 「はは、そうかもしれない。 なんせ俺はトロイア戦争と冒険の記憶…即ち宝具とペーネロペーの事は渡さなかったからな」 「…ふん、やはりか」 頷いて指を組みながら落ち着いた、されど力強い口調で言葉を続ける。 「俺と言う英雄を語るにはトロイア戦争に終止符を打った木馬、そして冒険…ペーネロペーの元へ帰るための愛と諦めない強い意志。 それが不可欠だ。 あえてそれらを渡さないことで、『機械的なただの軍師オデュッセウス』としての俺が出来上がったはずだ。 」 トロイの木馬と愛する妻、ペーネロペー。 オデュッセウスには欠くことが出来ないこの2つの大きな軸を、彼は異聞帯の自分に与えなかった。 そうすることで異聞帯のオデュッセウスは完全に無自覚のまま、制限されていた知識と情報のみで行動するしかなかった。 汎人類史のオデュッセウスがそうなるよう仕向けたとも知らずに。 更に彼は『神の命令を遂行すること』が動力となっていた。 そんな異聞帯の己とは対に、本来のオデュッセウスの動力はペーネロペーへの『愛』。 それは神の側にいただけでは得ることのできない、人間が成し得るひとつの奇跡。 「愛、ねぇ」 コーヒーを口に運ぼうとして、その手が止まり「まあ確かに言ってたな。 愛した者がどうとか。 オレはそのへんはどうでも良いが、渡した情報を制限したことは誉めてやる」 ぐいっと紙コップを傾け一気に飲み干し、タン、と机の上に置いてオデュッセウスと向き合う。 従兄弟同士だが、こうしてちゃんと互いの顔をしっかり見るのは初めてだった。 「宝具を渡さなかったのは重畳だ。 仮に宝具まで持っていたらあっという間にオレ達はやられていただろうよ。 自分自身を嵌めるとは中々性悪なやり方だがな」 エメラルドグリーンの瞳をした男が言えば、 「ペーネロペーのことは例え手足を引きちぎられようが、霊核を貫かれようが渡す気は無かった。 彼女の存在が俺をここまで引き上げてくれているのだから」 琥珀色の瞳をした男が言う。 お互いに何を重要視しているのか食い違っていることを理解していながら、イアソンは無機質な声で言った。 「愛の力こそ全て!ってか」 「勿論だ」 オデュッセウスが大きく頷く。 「……それは大層なこった」 面倒そうな顔をするイアソンを見て、オデュッセウスは困ったような笑みになる。 「お前もお前なりの事情があるのだろう。 そこに俺がとやかく言う資格は無いし、触れることも止めておこう。 だが…そうだな」 カタリと席を立って、イアソンの肩に手を置くオデュッセウスが優しい声色で言う。 「あの海でのお前は、誰が見ても素晴らしい英雄だった。 よくマスターを守ってくれた」 肩に乗せられた僅かな重みと労いの言葉に「…本来のではないとは言え、アルゴノーツだぞ。 オレの船でオレの仲間だ、出来て当然だろ」と、照れた顔を見られるのが気に入らない!と言わんばかりに顔を背けるイアソンの反応に、オデュッセウスは柔らかく目を細めた。 口に出して笑っては、この金髪の男は拗ねてしまうから。 「そうだな。 今度、酒でも酌み交わさないか。 祖父や父から聞いた、生前のアルゴー号の話も船長である貴殿から聞いてみたいものだ」 「オレが暇になったらな。 ああそうだ、話を聞いてやった礼に、これ。 書く気は無いか?」 イアソンからひょいと差し出されたセイバー回覧板。 オデュッセウスはそれを手にする…こともなく、鋭い目付きをして溜め息をつく。 「駄目だ。 俺はライダークラスであるし、そも、これはお前に課されたものだろう。 お前がやらなくては意味がないぞ」 穏やかでいて厳しい態度はイアソンを思ってのことだが、本人は面倒そうにうなだれた。 「…やっぱ駄目か…ちくしょう、オレは知恵と勇気が武器なんだ、鍛練など他のセイバークラスの奴等だけでやってくれ…オレは後ろでサポートしてやるから…」 ぶつぶつと文句を言いながら嫌々サインをする男に向けてオデュッセウスはぽつりと一言呟いたがそれは彼の耳に届くことは無く、ただ心からうだうだと文句を垂れていた。 「仕方ない、仕方ないからサインしてやるか…ああ嫌だなあ…助けてヘラクレス…」 「…フッお前ならば、多少の荒波程度どうってことあるまい?少なくとも俺は、そう信じている」 「はいはい、そういうの良いから」 イアソンも席を立ち、空になった紙コップをポイと放り投げる。 うまくゴミ箱に入ったのを確認してから回覧板を手に取り、鋼鉄スーツの男に向けて言った。 「オデュッセウス。 お前ならいつでも歓迎するぞ、我がアルゴノーツにな」 それを聞いて一瞬嬉しそうな顔をするが、目を伏せ首を横に振った。 「…有難い申し出だが遠慮しておこう。 俺は海神ポセイドンの怒りを買った男だ」 「げっ!そうだったな…まあ良い。 カルデアにいるからには従兄弟のよしみとして仲良くやっていこうじゃないか」 「ああ。 だが鍛練から逃げたり、悪戯が過ぎるならば注意させてもらうぞ」 「はあ?お前はオレの保護者か!オレより年下のくせして!」 「保護者ではない。 従兄弟のよしみ、というやつだな」 そんなやり取りをしながら、二人は並んで食堂を後にした。 『貴殿に敬意を、英雄イアソン』.

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