メイド イン アビス グェイラ。 メイドインアビスエンドカードに出てきた見たことない女の子はイリムなの?そしてイリムはメイニャなの?考察中

メイドインアビス5巻感想&アニメ化決定!!!!!!!!

メイド イン アビス グェイラ

「勉強不足なご質問で恐縮なのですが……」 その言葉から始まった地獄の10分間で、俺の心はモロモロと崩れ去った。 俺はいたって普通の冴えない大学院生をやっている。 専門は宇宙工学で、今はちょうど、学会での発表が終わろうとしている所だ。 研究は概ね順調で、女っ気はないが私生活にも特に不満はない。 彩りもないがこれといった危機もなく、良くも悪くも平凡な人生だ。 ただ一つだけ、他人と大きく違う所がある。 舞台はアビスという大穴のある街。 最高位の探窟家、白笛ボンドルドに魅せられて祈手の一員となり、探窟の最前線を開拓するためにどんなこともやった。 俺は深界の底を見ることなく死んでしまったが、あの後、探窟隊はどうなったのだろう。 ボンドルドの旦那は、夜明けを迎えることが出来たのだろうか。 気がかりに思いつつも知る術がなく、その穴を埋めるように、俺は宇宙という未知の世界に傾倒していった。 記憶の中の登場人物には、未だに出会った事がない。 もっともこんな非科学的な話、誰にも打ち明けたことすらないのだが。 「すみません、そろそろお時間が……」 司会にそう言われ、男はやっと気が付いたように軽く手を叩いた。 「失礼しました。 素晴らしい発表でしたので、つい話しすぎてしまいました。 貴重なお時間を、ありがとうございます」 質問者の男は穏やかな表情で拍手をした。 つられて会場からも拍手があがるが、鋭い質問で詰められ続けた俺を憐れむような空気を感じる。 この人が専門外なんてとても信じられない。 学生を苛める趣味があるか、実は会ったことがない他大の教授かどちらかだ。 一切の嫌味を感じさせない笑顔が尚更苛立たしい。 正体を暴いてやろうと、俺は半ばヤケクソで言い放った。 「……お答えできなかった質問は、後日お返事します! お名前とご所属を伺ってもよろしいですか」 「おや、申し遅れました。 私はボンドルド。 海洋生物学研究室の教授をしております」 後でご挨拶に伺いますね、と。 どうして気付かなかったのだろう。 両手を広げる仕草はあまりにも『その人』で、脳が興奮で震えるのがわかった。 *** その後の俺はといえば、一瞬目の前が真っ白になって、壇上から転げ落ちるように退場した。 ボンドルド。 かつての記憶にあったその名前を、脳内で何度も反芻する。 数多の屍を引き連れて、アビスの最前線を征く姿。 破綻した倫理観の持ち主の癖に、命の全てを愛していた。 人生を懸けて慕い、信じ、結果として命までも捧げた人が、今、ここにいる。 声が頭から離れなかった俺は、ろくに発表を聞くことができなかった。 やっとの事で我に返った時には既に全ての発表が終了していて、日も傾き始めている。 これっきりにしてはいけないと思いながら、夢見心地のふわふわした気分から抜け出せないでいた。 「なぁ、ボンドルド教授って……」 ぼんやりと尋ねてみれば、同期は肩を組んで声を潜める。 「お前も災難だったな、あの人に絡まれるなんて」 「有名人なのか?」 「そりゃあもう……元々は海洋学専門じゃなかったのに、飛び込んできてあっという間に教授になっちまったんだと。 学生ウケはいいけど、伝統をぶっ壊すような斬新な研究ばっかりやるから、お偉方からは嫌われてるらしいぜ」 新進気鋭の優秀な人物だが、人格に問題あり。 記憶と違わない人物評に苦笑する。 いや、記憶の中のあの人はもっと非道だった。 大学という組織の中でそこそこ真っ当にやっているのであれば、それは「丸くなった」と言えるのかもしれない。 話がしたい。 あの後、探窟はどうなったのか。 お気に入りの成れ果ては戻って来たのか、祝福は手に入ったのか、プルシュカは無事に完成したのか。 それから、旦那の今についても。 どんな風に生きて、何を考えてきたのか。 突風のような好奇心が、心を開くように通り抜け、俺は相槌も打たずに考えを巡らせていた。 「……けどあの人、いろいろ噂が」 「グェイラ」 同期の言葉を遮って、ボイスチェンジャーを通さない透明な音が俺の名を呼ぶ。 本当に、どうして気付かなかったのかと思う程、記憶の中の旦那と同じ声だった。 懐かしさに思わず胸が暖かくなる。 突然背後から声をかけられたからか、同期は顔を青くして体を縮こまらせている。 「お話し中でしたか?」 「いや、全然大丈夫っす。 時間よかったら、あっちで」 俺は同期の腕を押し退けて、カフェスペースに彼を案内した。 ともあれまずはこの人が本人で、同じ記憶を持っているのか確かめなければ。 そんな謎の使命感に燃える俺をよそに、目の前の人は自販機のホットコーヒーを飲みながらまず俺を労った。 「……さて。 貴方には改めてお礼を言いたい。 とても素晴らしい発表でしたよ。 思わず他の方の時間まで使ってしまいました」 「いやいや。 興味持ってもらえて、何よりっす」 どうせ普段からロクな質問なんか飛んでこないのだ。 研究には手厳しかったその探求心を思い出せば、悪い気はしない。 「ですが、わざわざ個別にお返事をいただくのは手間でしょう」 「いいんすよ、俺の気が済まないんで。 メールでまとめて……」 「いつでも来ていただいて構いませんよ。 工学研究棟とは近いですから」 「いや、でも、ボンドルド教授……」 「貴方にそう呼ばれるのは、いささかむず痒いですね」 再び両手を広げる、見慣れた仕草。 確信に近づく予感に、心臓が跳ねた。 「昔のように呼んでいただいて構いませんよ、グェイラ」 「……! だ、旦那、覚えて……」 「ええ。 会いたかったですよ、グェイラ」 旦那はそう言って、やわらかく笑った。 仮面で隠されていたはずの、旦那の表情がわかる。 透き通る瞳がまっすぐ俺を見て、口元がゆるい弧を描く。 俺はさりげなく視線を下げた。 首元には白笛の代わりに、小粒のダイヤモンドが光っている。 「……すんません、記憶がある人に会うのは初めてで」 「そうだったのですね。 私の方は、何人かお会いしています。 一人はうちで助教をしているのですよ。 ほら、クオンガタリの件で……」 「えっ、あいつですか。 はぁ……旦那がいるなら、俺も海洋行っとけばよかったっす」 「おやおや。 自分の興味のある分野を学べばよいのです。 無理に合わせずともいいのですよ」 「そうは言っても、アビス以上のモンなんか中々ないじゃないっすか?」 「……ええ、本当に」 あの後、探窟隊に何があったか。 お互いの研究分野について。 どんな人生を生きてきたのか。 時間を忘れるほどに話は盛り上がり、閉館のアナウンスがスピーカーから流れた。 窓の外の日は落ちて、既に暗くなっている。 太陽の差さない前線基地に戻ったようで、俺はひそかにこの状況を楽しんでいた。 「グェイラ、この後は何か予定でも?」 「いーえ、なんにも。 今晩も一人寂しくコンビニ飯っすよ」 はは、と軽く笑う俺に、旦那は少し考える素振りのあとに手を叩いた。 「では、私の家でご一緒に夕食をいかがですか?」 「えっ、いいんすか? ご迷惑じゃ……」 「構いませんよ。 それに、あの子も喜びます」 それって、と言いかけてやめた。 まさかそんな偶然まであり得るのだろうか。 俺は初めて、運命というものに感謝した。 *** 旦那の家は、郊外の落ち着いた住宅街の中にあった。 前線基地のようないかつい建物が出てこなくてほっとする反面、旦那が人間らしい住居で普通の生活をしているのだと思うと、ひどい違和感に襲われる。 「おかえりなさい、パパ!」 「ただいま、プルシュカ。 今日もお留守番ができて偉いですね」 ドアを開けるなり、女の子が旦那に飛びついた。 俺が最後に見た位の背格好で、思わず目の奥が熱くなる。 プルシュカだ。 ふわふわとした白い髪、きりっとした睫毛と赤い瞳。 旦那と揃いの色だった。 唯一違うところといえば、髪の毛がまっすぐ伸びていることだろう。 上昇負荷は、存在しない。 プルシュカは頭を撫でられ、嬉しそうに旦那の腕にすり寄った。 「今日は私の友人を連れてきました。 ご挨拶できますか?」 「うん! あたしプルシュカ! よろしくおねがいします!」 「あ……俺はグェイラ。 よろしく」 差し出された小さい手を掴むと、ぶんぶんと上下に振られる。 今は生きている。 力強さと温かさが、俺にそう伝えていた。 俺の名前を聞いても反応がないあたり、彼女には記憶はないのだろう。 初対面のようにされるのは寂しいが、同じように安堵もした。 覚えていたなら、きっと普通の親子関係なんて送れなかっただろう。 プルシュカは手をそのままに、ぐいぐいと俺を引っ張る。 「グェイラ! あたしの家族、紹介するな! こっちこっち!」 家族。 その言葉にはっとする。 娘がいるのだから、つまり母親がいる訳で。 プライベートな空間に招かれている、という意識が急に湧いて出る。 旦那の方を伺うと、招き入れるように手を差し出していた。 「どうぞ。 上がってください」 急に喉が渇いたような気がして、唾液を飲み込んだ。 「じゃーん! この子がメイニャ!」 プルシュカの両手の上で、メイニャはメヤァ、とは鳴かなかった。 少し太り気味のハムスターだ。 メイナストイリムが何だったのか俺は知らないが、代替品としては妥当、なのだろうか。 メイニャはプルシュカの掌の上でごろごろと転がっている。 「それでこっちが……」 プルシュカが駆け寄ったケージには、茶色い毛の兎が入っていた。 見覚えのある色と形は、旦那のお気に入りだった成れ果てにそっくりだ。 薄ら寒い予感に、俺はゆっくりと旦那を振り返る。 「……まさか、ナナチ…………」 「えっ、なんで知ってるんだ?! もしかしてパパが教えたのか?」 「……まぁ、そんなとこかな」 被検体の名前まで覚えているとは、相変わらずいい趣味なことだ。 旦那はケージを開けて手を伸ばすが、ナナチはプルシュカの方にすいっと避ける。 「かわいいでしょう? ですが私にはあまり懐いてくれないのです」 「ナナチはふわふわで気持ちいいんだ! グェイラも撫でるか?」 本人だけでなく似た別"兎"にまで嫌われるとは、因果も巡るものかと苦笑してしまう。 俺は旦那を差し置いて、プルシュカと一緒にナナチを撫でた。 残念そうにおやおや言いながらも、旦那はずっと微笑んでいる。 そういえば、家族、といっても母親は不在のようだ。 リビングを見回してみても写真などはない。 テーブルを挟んだ椅子は3脚あったが、装丁の違う一脚は来客用のようにも見える。 気にならないといえば嘘になるが、敢えて聞こうとは思わなかった。 マナーとか気遣いからじゃない。 3人だけの空間がやけにしっくりきて、しばらくこのままでいたいという俺のエゴだ。 「さて、貴方も来てくれたことです。 久しぶりに料理でもしましょうか」 「あ、あたしも手伝う! グェイラは座って待ってて!」 プルシュカは言うなりナナチを俺の膝に預け、さっさとキッチンに向かって駆けていった。 旦那が、料理。 行動食四号で育ったあの二人が、ちゃんと料理を作っていたとは。 いや、もしくは、冷凍食品をチンすることを料理という派かもしれない。 もしくは二人して奇跡的なメシマズ……。 そういえば旦那は、『久しぶり』と言っていた。 プルシュカには普段から何を食べさせていたのだろう。 聞こえ始めた水の音が、俺に余計な想像をさせる。 仕方ない。 一抹の不安を覚えながら、俺はナナチをケージに戻して、こっそりとキッチンを覗いた。 「パパー、これでいい?」 「ええ、とても綺麗に切れていますよ、プルシュカ。 上手になりましたね」 プルシュカはお手本のようなきれいな手つきで野菜を刻んでいる。 隣では旦那が軽量スプーンで材料を量っていた。 なるほど、教科書通りに料理するタイプか。 研究者の旦那らしいといえばらしい。 初心者にありがちな自己流アレンジなどがなければ、大きく外れることはなさそうだ。 俺は安堵して息を吐いた。 「気になりますか、グェイラ」 「うぇっ?! ま、まあ……何作ってんのかな〜と」 旦那は振り向かないままそう言い、俺はしどろもどろになりながら答える。 「もー、グェイラ! 待っててって言ったぞ!」 「ごめんごめん。 俺も手伝おっか?」 「いいの! 今日はお客さんなんだからな!」 口を尖らせたプルシュカに追い出され、俺はナナチを眺めながら仕上がりを待つ。 出来上がったパスタは可もなく不可もない味で、それでもプルシュカが胸を張るものだから沢山褒めた。 友達と学校の裏山を冒険したことや、理科のテストの点数が良かったこと。 旦那は全てを嬉しそうに聞いて、彼女の機転や頑張りを褒めた。 世界が変わっても、プルシュカが大事にされているのがわかる。 アビスのない世界なら、二人が引き裂かれる事はないだろう。 それはきっと、幸せなことだ。 あの旦那が、人間らしく、普通に生きている。 俺が知っていた黎明卿なら、決して送ることの無かったであろう平和な日々。 それを享受する旦那を見て、俺は諦めたような気分になった。 あーあ、旦那も人間になっちゃったのか。 勝手な理想を押し付け、幻滅して残念がるなんて最低だ。 けれどそれが本人の幸せなら、俺が邪魔する道理はない。 もう来ることはないだろうな、と、そう思いながら、俺はまた来てというプルシュカに手を振った。 *** 「あーあ……カワイソ。 グェイラさ、あんまり勘違いしない方がいいよ」 研究室の同期の女は、目の前で口紅を塗り直しながらそう言った。 学会で旦那に詰められたネタから話が膨らみ、俺は家に招かれた事をぽろっと溢していた。 「勘違いって、何が」 「ボンドルド教授。 あの人誰にでも『ああ』なんだから」 そんなことは前世から知っている。 あの人の愛は、神様から人間に向けた博愛だ。 俺たち人間は、どんなに愛されても特別にはなれない。 階層が違うのだ。 あの頃は男所帯で周りも気の狂った連中ばかりだったが、今はそうじゃない。 何人も泣かせてきたんだろう。 特別になれるなんて思い上がっちまったのが運の尽きだ。 かつての自分を棚に上げ、俺は知った風に相槌を打った。 「けど娘がいるだろ、あの人」 「え?」 同期の女は、化粧品を乱暴にポーチに詰める手を止めた。 「……グェイラ、あんた、何見たの」 「何って」 「教授の奥さんと娘さんは、随分前に事故で……」 亡くなってるんだけど、と、続ける顔は青い。 そんな筈はなかった。 俺は確かにプルシュカを見て、触れて、あの子の作った料理を食べて、学校の友達の話を聞いた。 あれが偽物とは、とても思えない。 「じゃあ、幽霊だとでも?」 だが同期の話は、別の方向に転がる。 「……教授が転籍する前の専門ってさぁ、遺伝子工学…………」 ああ、そんな話もしていたっけ。 かちりとピースが嵌まるような音がした。 旦那なら、やりかねないなぁ。 様変わりした世界には、かつてより遥かに高いハードルがある。 それでも俺は、ごく自然にその可能性を受け入れていた。 そしてそれがただの噂で、可能性だとしても。 煙の元には必ず火がある。 旦那に相応しい、深い謎が。 「……何にやにやしてんの、グェイラ」 「へっ? 別に、なんでも」 「あんた、調べる気でしょ?! 絶対ヤバイよ、深入りしない方がいいって……!」 「……ははっ!」 堪えきれずに笑ってしまった。 今更な事を、青ざめた顔で真面目に言われるなんて可笑しいったらない。 出会ったら最後、深界から逃れる術なんてない。 憧れを取り戻した俺は、もう止まれないのだ。 *** 「はーい……っわ、グェイラ! 来てくれたのか!」 来ることを連絡しなかったからだろう。 俺を迎え入れたプルシュカは、顔を輝かせて俺を見た。 うん、やっぱり来て良かったわ。 「こんにちは、プルシュカ。 旦那は?」 「パパなら中! もうっ、なんで連絡してくれなかったんだ? 言ってくれたら……」 「どうしました、グェイラ」 顔を上げる。 玄関には、大きな荷物を抱えた旦那が立っていた。 あの時と同じ、うっすらとした笑みを湛えている。 「その荷物、どうしたんすか?」 「ふふん、今日はリコんちにお泊りするんだ! パパが送ってくれるって!」 「ええ。 折角来て頂いたのに残念ですが……」 「いや、いいんすよ。 今日は旦那にお土産持って来たんで。 ……プルシュカは、また遊ぼうな」 頭をグリグリなでると、プルシュカは表情を緩める。 「そうでしたか、グェイラ」 旦那は俺の背を撫で、顔を寄せてそっと呟いた。 「後でゆっくり、お話ししましょうね」 プルシュカをリコの家に送り届けるまで、俺は助手席からプルシュカと喋っていた。 やっぱり生きてるよなぁ、なんてぼんやり思いながら。 玄関でリコとハグするプルシュカの姿は、存在を確信させるのに充分だつた。 旦那の自宅に戻り、リビングに通された俺は、柔らかいソファに身を下ろす。 しんとした部屋は、オレンジの照明で照らされている。 「今日はずいぶん楽しそうでしたね。 何か良いことがありましたか?」 「いやぁ、良いことといいますか……やっぱり、旦那は旦那だな、と」 「不思議な事を言いますね」 旦那の声は優しかった。 沈黙は、俺が話し出すのを待っているようだ。 「あのね、旦那」 プルシュカのこと、聞いたんです。 そう囁くと、旦那は顔を上げた。 目が続きを促している。 「……それだけ。 俺は別に、何も聞きません」 「……意外な答えですね。 貴方が求めるならば、私は全てお話ししますよ?」 「いや、いいっす。 旦那が、ちゃんとプルシュカのこと大事にしてるのはわかってるんで。 生まれとか、親とか…………そういうのは、いいんです」 「プルシュカが心配なのですか?」 俺は首を振った。 「心配なのは、旦那の方ですよ。 アビスが失くなって、寂しいんじゃないですか?」 さみしい、と、旦那は咀嚼するようにゆっくり繰り返す。 右手が首元のダイヤを撫でた。 「寂しい、ですか。 ……ええ、そうとも言えるかもしれません。 素晴らしい洞察力です、グェイラ。 貴方はいつも、私には無いものを齎してくれる」 「相変わらず、褒めるのが上手いっすね」 かつてはどこか冷静に受け取った褒め言葉も、今は俺の心を温かく満たす。 「一人で挑むなんて、水臭いじゃないですか。 そのための祈手でしょ? 俺はあんたに、着いていきますよ」 仮面も外套もなくとも、闇の中でうっそりと微笑む姿は確かに、おれの知っている旦那の姿だった。 「旦那のこと、信じてますんで」 「おやおや。 どうにも私は、ヒトではいられないようですね」 捧げるには安い酒で盃を交わし、俺達は二人、再開を祝した。

次の

#メイドインアビス #グェイラ なり損ないの家

メイド イン アビス グェイラ

黎明卿の探窟隊に入ると決まった時、先の短い命になることを覚悟していた。 俺に与えられたポジションは、前線基地内での実験助手。 そして探索戦闘を任される祈手たちの兵器作成だった。 初めの頃こそ内勤で拍子抜けしたものだが、基地の中にいるからと言って、身の安全が保障される訳ではない。 『月に触れる』の実験で黎明卿は俺たちを何人も使い潰したし、その倍以上の生体素材が消費されていることも知っていた。 カートリッジは一つの短い命でも、深界の探窟を大きく前進させる。 俺の作る装備は必需品だけれど、決定的な力は持たない。 だからこそ、命の長さより価値のあるものを、俺はずっと求め続けている。 ブーツの靴音が、狭い工場に響く。 実験場の近くに設けられたこの場所は、研究区画の中でも端の方だ。 そんな場所に寄りつく人間は大方決まっていて、施設の主はそのうちの一人だった。 「ご苦労様でした、…………。 今日は終了して構いませんよ」 「はい、黎明卿」 俺はちょうど完成した製作物をロッカーに仕舞った。 今日の仕事は『暁に至る天蓋』に耐火加工を施すことだ。 大穴の中で火を扱う原生生物はほとんどいない。 対人か、火炎放射器でも使うつもりなのだろう。 最近は四層に上昇する隊が多いから、他の探窟隊と上でやり合っているかも。 そんなことをぼんやり考えていると、唐突に卿の手が肩にかかる。 「…………、聞こえていますか?」 「え?」 「先程から何度も名前を呼びましたが、返事がないものですから」 「名前……? 俺の名前ですか?」 「ええ、…………。 あなたの名前でしょう?」 卿の言葉に不自然な空白が混じった。 いや、音が耳に入ってきていることはわかる。 けれどその音が言葉として変換される前に、頭の中から掻き消えてしまう。 そもそも俺の名前は、なんと言っただろうか。 そらに描いてみようとした指は、動かずに止まってしまった。 この人に隠し事はできない。 俺は正直に、自分の名前が判らなくなったと話した。 卿は仮面の上から俺を観察するように覗き込む。 「興味深い症状です。 おそらく精神隷属機の影響なのでしょうが……少々検査をしても?」 「はい、構いません」 この人の『検査』を二つ返事で了承するなんて、俺も前線基地に染まったものだと自嘲した。 「あれ、……何してんの? 検査着?」 検査後、白いローブ姿の俺はグェイラに呼び止められた。 グェイラは古株の祈手で、気さくな良い奴だ。 事情を話せば、神妙な雰囲気で頷きながら聞いてくれる。 ついでに何度か名前を呼ぶのも試してもらったけれど、やっぱり聞き取れなくなっている。 そればかりか他の人の名前に反応してしまう始末で、俺は恥ずかしさに顔を覆った。 グェイラの事を認識できているのは、不幸中の幸いだ。 「精神隷属機の影響、ねぇ……」 あれがもたらす祝福と呪いについて、俺たちはよく知っていた。 自分たちがその渦中にいるのだから当然だ。 最も、説明を聞いたのは、最初の同期に成功した後だったけれど。 「……発狂、ってほど重症じゃないんだ。 自我の崩壊、自他境界の喪失……こういう形で現れることもあるんだなぁって」 「感心してる場合かねぇ」 「黎明卿は、症状の経過を見ようって。 精神隷属機で発狂する個体が少ないほど、探窟にも有用だろ」 「うわっ……旦那みたいなこと言うなよ」 「そうかな」 俺のはただの効率主義で、卿の考えている事とは質が違う。 けどこれもグェイラなりのジョークで励ましなのかもしれない。 俺はそういうのに疎かった。 「ただ……」 ひとつだけ残念な、というか、心残りに思うことがある。 「俺は最初の一回しか、卿に使ってもらったことがなかったな、って」 *** 辛気臭い話を聞かされてしまった。 同期なんか別にいいもんじゃないぞと言ってやりたかった。 でも言えなかった。 仮面の下のあいつは、憧れに満ちた目をしていたはずだったからだ。 深界の底への、そして、白笛『新しきボンドルド』への。 欠落した倫理観を覆い隠すほどの力と偉業、その輝きに目が眩んだ奴から、足元を掬われて落ちていく。 その両方を嫌という程見てきた俺にとっては、あいつも可哀そうな祈手の一人だった。 とはいえ、一つだけ疑問がある。 あの祈手は、精神隷属機でたった一度、それも短時間旦那の精神を宿しただけだった。 それなのに、慢性的な悪化が生じるものだろうか。 旦那なら追求したかもしれないが、俺にはそれほど悪趣味な探求心はない。 探窟とプルシュカの世話に追われる日々を過ごし、そんな祈手の事など忘れかけた頃だった。 地上なら深夜と呼ばれる時間帯になり、やっとのことで今日の実験が全て終わった。 新しい理論を試したいだとか何とか言って、予定外の試験を散々やったせいだ。 祈手全員、精神的にも肉体的にも疲れきったというのに、旦那はぶつぶつ呟きながら実験記録を付けている。 こりゃ付き合ってたら夜が明ける。 もう戻っていいすか、と、言いかけて、その姿が少し小さく見えることに気が付いた。 体を入れ替えることはそう珍しくもないのに、違和感が小骨のように引っ掛かる。 「……旦那、体替えたんすか?」 「おや、グェイラ。 気が付きましたか」 至近距離から見れば、その姿を思い出す。 自分を失いかけていたあの祈手を、何故。 同期している旦那の声は、心なしか弾んでいる。 「モーレフは優秀な研究者でしたね。 『月に触れる』の完成は、彼の手がなければ不可能でした」 本人さえもう覚えていない名前を、旦那は慈しみのこもった声で称賛する。 モーレフの事が哀れに思えて、俺は思わず苦笑した。 同期していない状態でも、祈手は旦那の一部扱いで、この人の愛はあいつの分もあったのに。 あいつはそれに気付くことなく、不毛な願いを抱えて消えた。 「そういうの、本人が生きてるうちに言ってやりゃあいいのに」 「おや? まだ彼は死んでいませんよ」 「体は、でしょう。 あいつの意識はきっとグチャグチャだ」 「ええ、知っています」 かつて聞いた言葉通り、症状の経過を見ていたからだろう。 「……もしかして、本人にバレないように使ってたんすか」 身体を指すと、旦那は両手を広げておやおや、と薄く笑う。 「隠していた訳ではありません。 彼の記憶には残らなかったようですが、私が覚えていますので」 だから問題ありません、と続くのだろう。 祈手はすべて『私』です、と、旦那はいつもそう言っていた。 「それに……最後にこれだけは、己の手で完成させたいと言ったのですよ」 旦那は『暁に至る天蓋』の袖をするりと撫でる。 うっすら漏れた息に、仮面の下で旦那の体温が上がるのがわかった。 俺の背筋を悪寒が這い上がる。 「素晴らしいでしょう? 自己も識別出来なくなってなお、『己の手で』と主張したのです」 残念ながら、俺にはその喜びを共有することはできない。 愛したものを躊躇なく研究の犠牲にする。 残酷な結果を嬉々として語る。 俺が面倒を見ている娘だって、同じなのだろう。 無邪気な笑顔を思い出せば、いくら俺でも心は痛む。 「……旦那は、プルシュカの成長を見ていたい……って、思ったりしないんすか」 答えは分かりきっていたのに、思わず口に出してしまう。 プルシュカへの愛はそれとして、奈落の未来を切り開くために必要な事だと言うだろう。 この人の憧れは止められない。 少しでも愛着を持っていてくれたら、なんて、望むだけ無駄だ。 案の定、旦那は一度それを肯定する。 「もちろん、いつも思っていますよ。 プルシュカが立派なレディに……」 「そうじゃなくて。 ずっと、とか、もっと長くって……」 「グェイラ」 遮った声に感情はない。 紫の光がぼう、と揺れる。 「その感情があれば、私もカートリッジに使えるのでしょうか?」 「……い、や……いい、いいんです。 すんません、バカなこと聞きました」 「なぜ慌てるのです、まだ話は……」 「あんたは!」 「……どうやったってもう手遅れっすよ」 半ば自棄になって吐き捨てた酷い言葉にも、旦那は仮面の奥でささやかに笑った。 「あなたもつれないですね」 「…………どーも」 平静を装いながらも、俺はひどく動揺していた。 初めて旦那の、人らしい負の感情の欠片を見た気がした。 唯一求めてやまない奈落から拒絶された事実は、旦那の心に傷を残しているのかもしれない。 旦那はスイッチを切り替えたように平熱に戻る。 俺の心臓はまだ熱い。 「では、これを開いて脳の状態を見てから終了しましょう。 まだ付き合っていただけますね?」 「はいよ」 有無を言わせぬ質問に頷いた次の瞬間、体はどさりと椅子から崩れ落ちた。 頭を打つより先に手がついたのは幸いだが、もしかしたら旦那がそうしたのかもしれない。 物思いに浸る間もなく、彼より一回り大きい祈手がすぐに現れて仮面を付け替える。 「グェイラ、運搬を」 「……へーい」 俺の返事を背に、旦那はひらりと片手を振って研究室を後にした。 祈手として最期を迎えるなら、願わくは。 この人に、俺の矛盾の全てを預けてから消えたいと思った。 そして消える前の一瞬、生と死の狭間でこの人の深淵を覗きたい。 夜と朝、人と化物、愛と無情。 黎明卿は、その境界線上に立っている。

次の

メイドインアビスエンドカードに出てきた見たことない女の子はイリムなの?そしてイリムはメイニャなの?考察中

メイド イン アビス グェイラ

本作は世界観や設定がこれでもかというほどつくりこまれています。 それもそのはず、作者・つくしあきひとは、もともとゲームが好きで、好きが高じて10年ほどゲーム会社でもあるコナミに勤めていた人物。 本作も因果関係がしっかりした道筋の通ったファンタジーをつくろうという意気込みのもと、スタートしたそうです。 そんな原作の魅力に惚れ込んだスタッフたちがつくったアニメ作品は、何度も作者に細かい部分の聞き込みをしたというだけあり、かなりの完成度。 作者からもその補完度合いを認められているほどです。 また、第1期が2017年7月からアニメ作品が放映され、第2期が製作途中、さらに2020年には映画も公開されました。 今回はそんな本作の理解に欠かせない、伏線を最新巻まで徹底解剖していきます。 漫画『メイドインアビス』のエログロファンタジーがすごい!【あらすじ】 主人公のリコは、「アビス」という底知れぬ深さを誇る縦穴の淵の街オースに暮らす少女。 その大穴に入った人間は、深くへと降りることはできても、上へ戻るときには身体に異常をきたす「呪い」を負います。 それにも関わらず、多くの人はその底にロマンを感じ、探窟家として最果ての地をめざしていました。 リコの母親ライザもそのひとりであり、伝説の人物とも呼ばれる女性。 しかし10年前から行方不明になっていました。 そんなある日、リコは探窟の途中で機械の少年と出会います。 そしてそのおりに、ライザのものと思われる封書を見つけ「奈落の底で待つ」という言葉を目にするのです。 リコは機械の少年をレグと名付け、ともにアビスの底を目指すのですが……。 『メイドインアビス』考察1:リコたちの足取り【8巻新情報あり】 一度行けば戻ってこられない、そんな恐ろしさがあるアビス。 それぞれ深くなればなるほど上昇しようとした時の負荷が強力になっていきます。 ここではリコたちが現在どこまで潜っているかをご紹介します。 最新8巻までその村でのエピソードが続きます。 ちなみにこの記事では伏線のみの紹介ですので、ストーリーの流れがどうなっているか気になる方は、からどうぞ。 『メイドインアビス』考察2:アビスの成り立ち アビスが発見されたのは1900年ほど前。 南海の孤島で見つけられたことが始まりでした。 直径は約1000m、その深さは未だに謎に包まれています。 そこには変わった力場が働いており、地上からは観測ができず、人が直接行くことでしかその謎は追えません。 そんな謎だらけの大穴は、一攫千金を狙う冒険家たちを数多く誘ってきました。 アビスに潜る彼らは探窟家と呼ばれるようになり、表層部の拠点は発展し、やがてリコたちが住むようなオースという街も出来上がっていくのです。 探窟家たちは見習いの赤笛、一人前の蒼笛、師範代の月笛、達人の黒笛、英雄・白笛 という階級に分けられます。 彼らは深部から電報船を飛ばし、地上に大穴の様子を届けます。 そこから分かっているのは、以下のことです。 深界は1層「アビスの淵」から、8層となる深界終点「奈落の底」があります。 現在分かっているのは、7層が15500m以上の深さだということ、終点が20000m以上の深さであるだろうといことです。 そして5層以下には「先導卿:選ばれしワクナ」、「神秘卿:神秘のスラージョ」、「黎明卿:新しきボンボルド」という要注意人物たちが探窟を続けているそうです。 5層でボンドルドと会ったリコたちは、先導卿、神秘卿はなんの届出もださず、無断で6層へ行ったといことを知ります。 今後彼らがどう関わってくるのかが楽しみですね。 『メイドインアビス』考察3:アビスの呪い それぞれの深界には上昇負荷、「呪い」とも呼ばれる、地上に戻りにくい力場が作用しています。 深界1層は軽い目眩と吐き気、深界2層は重い吐き気、頭痛、末端の痺れ、深界3層は2層までの負荷にさらに平衡感覚の以上、幻覚・幻聴という症状。 そして深界4層では全身に激痛、穴という穴から流血、深界5層全感覚の喪失、それにともなう意識混濁、自傷行為があり、深界6層にもなると人間性の喪失、もしくは死、7層となると確実な死をもたらします。 また、不動卿オーゼンから明かされた話では、5層からは時間の感覚が狂い、数週間過ごしたつもりが数ヶ月過ごしたことになるとも言われています。 そしてこの呪いをナナチはこう表現しました。 地下世界に光を運び、同時に観測を阻むものであり、奈落の秩序と正体を頑なに守り続ける正体不明の力場。 縦穴をくまなく満たすいわばアビスの血液ともいえるもので、縦穴から遠いほど力場は弱くなります。 ナナチはその力場の力が読めるようになっており、それを利用して呪いを受けない場所に隠れ家をつくっていました。 ボンドルドの娘プルシュカが飼っているメイニャにもその力があり、メイニャの匂いをかぐとその能力を利用することができるそうです。 ちなみにその力場が見えるものには、そこに人の意思までが感じ取れるそう。 深界生物であるタマウガチなどもそれを読んで人間の攻撃を先読みします。 しかしこの呪いについては、黎明卿ボンドルドから新たな考察材料が与えられました。 アビスは呪いのみを与えているのではなく、その負荷に隠れて見えないほどの「祝福」をも与えているということ。 それを一身に受けたのが彼の研究の産物ともいえるナナチだということです。 祝福とは単純に力場の流れが読めるということなのでしょうか。 それを応用してボンドルドはメイニャをつくったのかもしれませんが、まだ他にも謎は隠されていそうです。 『メイドインアビス』考察4:アビスと2000年の周期 ボンドルドが以前に「アビスの明日を見届けねばなりません」と言っていましたが、ナナチからその詳しい内容は「次の2000年」が目的だということが明かされました。 このことについて詳しく考察していきましょう。 少々長くなってしまいますが、重要な内容なのでお付き合いいただければと思います。 そのあとに6巻でアビスの淵、深界1層にある埋葬塔についての伏線が残されます。 その埋葬塔にはお祈り骸骨という2000年前の何百体もの骸骨がありました。 その後埋葬塔の下にはさらに4000年前のお祈り骸骨があり、6巻でそのさらに下に6000年前のお祈り骸骨が発見されたという描写があります。 そして現在は、折しも最新のお祈り骸骨から2000年が経とうとしている頃。 街では誕生日に亡くなる人物があとを絶たないという不可思議な現象に見舞われていました。 それに疑問を持ったのが船団キャラバンで薬師をやっているというミオ。 7年前からまったく変わらない容貌だという彼女についても今後の展開が気になります。 その頃アビスの6層で、レグが慣れ果ての村にある穴の中央に、おびただしい数の不屈の花「トコシエコウ」が落ちてくるのを確認します。 その地面にあったのは死者の名札。 オースでの葬式は、トコシエコウの花とともに故人の灰をアビスに還すのですが、レグは大穴での花吹雪に、アビスになにか異変が起こっているのを感じとりました。 この2000年ごとに大量の人が死ぬということにアビスが関わっているのは明白ですが、これはどんな真相に繋がっているのでしょうか。 アビスの遺物であるレグが機械であるのに生殖器があること、ナナチがアビスの呪いを血液と表現していたことから、この大穴自体が何か有機生物だという可能性も考えられますね。 レグがエネルギーを概念的に吸収するということと同じように、アビスも人間を糧にしてその存在を維持してきたのかもしれません。 そして、この吸収力はお祈り骸骨が増えるにつえて年々大きくなるつつあるので、オース全体を滅ぼしかねないものだという可能性も。 アビスが人間をエネルギー源にするというのなら、深層にいくのに必要な白笛が人間から作られているというのも納得がいきます。 果たして真相はどんなものなのでしょうか。 『メイドインアビス』考察5:ライザの封書 ライザの白笛とともに見つかった遺物のなかにあった封書も重要な伏線のひとつです。 そこには「奈落の底で待つ」という言葉が記されていました。 この他にもその封書にはところどころ異なるものの、レグに似た人物も描かれていました。 7層で出会い、試しに声をかけてみたものの、驚くべき跳躍力で逃げる「ヒトガタの影」と表現されています。 オーゼンは4層「巨人の盃」の奥にトコシエコウの群生地があり、そこにライザの墓があり、彼女の白笛を見つけたと言いました。 そこはライザが好きだった場所で、信憑性がありそうなものの、そこには誰も埋まっていなかったと言います。 しかもその封書は彼女の筆跡ではなく、オーゼンはふざけてもそんなこと書かないだろうと言うのです。 このライザの封書に第三者が関わっていることは明らかですが、現在最も有力なのは記憶を失う前のレグではないでしょうか。 ところどころで彼女との関わりが明かされ、オーゼンから「喋り方も体さばきもライザに似ていた」と言われているので密接な関わりがあったことが伺えます。 『メイドインアビス』考察6:リコの謎 アビスで生まれ、視力は正常なものの、ものを見る時に水晶版を通さねば頭痛が起こるというアビスの呪いを持っている主人公の少女リコ。 しかし初めての探窟でかなり酔ったこともあり、アビスの呪いに強いというわけではないようです。 彼女は国からの特命で、妊娠中でありながらもアビスに潜った時にライザから産み落とされました。 それは10ヶ月にも及ぶ探窟で、他国の探窟隊とも争いが起こり、調査隊はほぼ全滅。 リコの父親であるトーカもこの途中で命を落としています。 生まれた当初は息をしていなかったものの、オーゼンが呪い除けの籠に入れたことで、なぜか再び息を吹き返しました。 その遺物に関してオーゼンの発言があります。 当時は呪い除けの籠に生物を入れると上昇負荷をかけずに上まで行かせることができると信じられていましたが、実際は呪いを受けるし、死にもするということ。 「籠に入れた生き物はただ動くだけ」ということがオーゼンによって判明します。 では、今のリコはどういう存在なのでしょうか。 籠から出た途端にリコがアビスの方へ這っていったということも伏線に繋がりそうです。 ライザの封書に「奈落の底で待つ」と書いてあったこと、レグが初対面のリコを助けたこと、記憶を失う前のレグが慣れ果ての姫ファプタに最高の価値を持つものである「ハク」を連れてくると言ったということも今後の展開に大きく関わってくるでしょう。 『メイドインアビス』考察7:レグの正体 もうひとりの主人公であり、記憶を無くした奈落の至宝のロボットがレグです。 彼の名前はリコが飼っていた犬の名前からつけられたのですが、記憶を失う前のレグもその名前だったそうです。 これはライザとの関係に関わってきそうですね。 レグに関する伏線となりそうなものは、手のひらの石のようなものが埋まっていること、機械なのにへそや男性器があること、いくつもの誰かが自分の中にいる感覚があり、その中の一人に支配された時にはボンドルドとやりあえるほどの力を発揮したこと、電気で動くものの、その威力は街全体を停電にさせるほど必要で、食事でも補給可能で電源というより「力」を概念的に吸い尽くしていること、ライザとの関係などです。 特にライザとの関係、レグの過去は物語の核に繋がるであろう重要なものになるでしょう。 オーゼンがその体さばきなどが彼女に似ていると言ったことや、「度し難い」という口癖がライザがわがままが通らなかったときによく言っていたものであることなどが明かされています。 この他にも4巻では彼女と食事をしている記憶を夢で見たり、オーゼンが言っていたライザの墓のような場所の記憶も持っているレグ。 そこで彼はトコシエコウが咲く花畑にある墓標に「もう行くよ…ライザ…」と言ったことを思い出しました。 目の前には無尽鎚(ブレイズリーブ)があり、手には何か石のようなものを持っていました。 また、オーゼンが「やはり探窟の技術は飲み込みが早かったね いろいろ思い出すまで行かせたくはなかったなァ…」と言っていることから、彼女とも繋がりがあるのかもしれません。 さらに7巻では彼が「干渉器」というものだということも判明し、姿形は違えど同じような存在がいることも明かされました。 そしてプルシュカが人柱となってつくった白笛によって、彼を操作することができることも判明。 白笛は「遺物の真の役割を引き出す」というのです。 この設定はのちのち他の事実への伏線にもなってきそうですね。 存在自体が大きな謎であるレグの今後の情報を待ちましょう。 『メイドインアビス』考察8:レグの目的とは? 6巻で慣れ果ての村に着いたリコたちですが、そこでレグは慣れ果ての姫ファプタに出会います。 彼女はどうやら記憶を失う前の彼を知っているようでした。 リコに名付けられる前に成れ果ての村にいた時からレグという名前だったこと、最も高い価値の「ハク」を連れてくるとファプタに言っていたことが明かされます。 そのハクという存在がレグと旅をともにしていたリコのことなのか、それともナナチのことなのか聞くファプタ。 しかしレグには記憶がないので答えられませんでした。 始めて出会いの時、原生生物に襲われそうになっていたリコを助けたレグ。 そのあと町中の電力を吸い尽くすほどの強力な電気で目を覚ましましたが、おそらくその時に記憶もなくしてしまったようでした。 しかしこれも偶然の事故ではなく、何か意図的なものだとしたらまた話は変わってきます。 どちらにせよ、レグがどんな経歴を辿ってきたか、記憶を失う前の話はかなり重要になってきそうです。 そんな彼の目的が、リコという、ハクともいえるほど大事な存在を深界に連れ戻すことだったのだとしたら、初めて出会った彼が彼女を助けたことにも納得がいきます。 アビスの2000年の周期に関して、リコがもしかすると何か鍵を握る人物なのかもしれません。 だとすればリコが生まれてすぐに深界の方へ這っていったというのも理解できますし、彼女の水晶体を通してものを見なければ頭痛が起こるというのも「呪い」ではなく「祝福」として何か意味を持ってきそうです。 『メイドインアビス』考察9:レグ最強説!火葬砲とは? 7巻時点では、ほぼ無敵のレグ。 彼の特性のなかでも特に気になるのが火葬砲。 どんなことをしても死ななかったミーティを殺すことができた不思議な力です。 レグの被っていたカブトに最初は雪の結晶のようなマークがあり、そこで残り何回その力が使えるのかを知ることができるそうです。 彼は今までに、初対面のリコをベニクチナワから助ける時、リコをナキカバネから助ける時、オーゼンから言われた訓練10日間を終えた時、3巻でミーティを殺す時などにそれを使い、4巻時点では多く見積もって残り3回だとされていました。 しかしボンドルドとの戦いの後、彼の研究所にあった電力を吸い尽くし、6巻現在では残り10発ほどだろうと考えられています。 この光の作用が一体どんなものなのか、なぜミーティを殺すことができたのか。 意識を失った際には周囲の力場が張り詰めるほどの強力さを見せるこの力が今後の戦いでは重要なものになってきそうですね。 また、7巻では最強説が唱えられる彼の体に傷がついてしまいます。 それはリュウサザイという地底生物の攻撃によるもの。 深いところに住む生物の場合、どうやら彼に傷をつけることもできるようです。 今後の戦いがさらに困難を極めそうですね。 『メイドインアビス』考察10:ライザの墓標と無尽鎚(ブレイズリーブ) レグとライザ(リコの母)の記憶で気になるのが、ライザの墓標のこと。 これはオーゼンの発言から明らかになった場所でしたが、そのあとにレグの記憶のなかでもそこを知っている回想がなされたことは前述した通りです。 過去の彼が無尽鎚(ブレイズリーブ)をなぜライザのお気に入りの場所に突き立てたのか。 彼女の馴染みの場所にその白笛と封書が置いてあれば、それを見た人はライザが亡くなったと思うはずです。 意図的にその演出をしたのか、それとも彼女と深い関わりがあったであろうレグが感傷的にそれを行ったのか。 何かライザが死んだと思わせた方が都合が良かったことがあるのでしょうか。 封書はおそらくライザによって書かれたものではないだろうという線が濃厚ですが、リコを深界に連れてこようとしたレグの目的も、もしかすると彼ひとりのものではなく、誰かラスボス的な人物が裏で糸を引いているのかもしれません。 『メイドインアビス』考察11:オーゼンの発言 ライザの師匠であり、深い関わりを持っていたであろうオーゼン。 彼女の言葉には謎が多いので、今後に伏線になりそうなものをいくつかご紹介します。 まずは最大の謎であるのが初めてリコに会ったときのもの。 自分を呪い除けの籠に入れ、地上まで運びださせてくれた彼女にお礼を言うリコに、重くて何度も途中でやめようと思ったと言うオーゼン。 なんと「置いとけばあの子も来てくれたんだよなぁ 惜しいことしたなー」と言うのです。 リコがそのままアビスの中にいれば、死んでしまっていたでしょう。 彼女が死ぬことで、探窟ができる人物ということは、彼女の周囲の人物。 リコの身近におり、オーゼンが知っているほどの実力のある探窟家といえば、ジルオが考えられます。 しかしそこまで考えられた時、オーゼンがなぜそこまでジルオにこだわるかが、気になるところ。 会話の節々で彼を気に入っていることが伺えますが、それが意味を持つのか、単純に好みなのかは今のところ不明です。 また、レグに関しても「思い出す前に処分しておかないとなァ」と言ったことから、リコたちを試すための演技だったのかもしれませんが、何か重要なことをレグに知られていたのかもしれないです。 この他にもオーゼンから白笛たちの間で口伝されている秘密もいくつか明かされました。 深界5層の「海」を越えるための謎めいた仕掛け、白笛の音色はある種の遺物を起動する鍵であること、6巻ではその正体が明かされていました。 この他にも、複数人の白笛が目撃したという深界7層の不思議な輪、奈落の底に至る道に棲む「門番」と呼ばれる得体の知れない生物が気になります。 『メイドインアビス』考察12:リコたちを狙う人物の正体は? 6巻で深界6層に到着した彼らを待ち受けていたのは、不気味な存在でした。 鳥に奪われた電報船に書いた上書きされて描かれた謎のマークがついた手紙が、彼らが眠っていた場所にあったのです。 しかもプルシュカの白笛も奪われていました。 ナナチの意識感知に気づかれない気配に、寝床を覆っていたレグの腕のトラップをくぐり抜けてきたのは何者なのでしょうか。 しかもそのあとそいつを探すために出た途中でリコとナナチの体毛が詰められた小動物の死骸を見つけます。 ますます怪しいと思われたところで、手紙に上書きされたのと同じマークの建物のような場所に行き着きます。 そこにいる人物がリコたちを狙っていたようですが、今のところ有力なのは慣れ果ての姫のファプタでしょうか。 ただしこの展開は今後の新キャラが黒幕として出てきそうなので、そちらの方が有力に感じます。 今後の展開から目が離せませんね。 『メイドインアビス』考察13:シェルミと双子の謎 レグがトコシエコウの花吹雪を見た場所で、死者たちの名札が足元に大量に落ちていましたが、そのなかのシェルミという名札が意味ありげに描かれています。 そしてそのあとに暗闇の中で、シェルミという人物には双子がいること、オーゼンと知り合いであろうことが明かされます。 シェルミという人物の返答がないことから、彼が生きているかも分かりませんが、シェルミと双子だという人物が慣れ果ての村の秘密や、アビスの2000年の周期と関わってきそうです。 どうやらオーゼンとシェルミの双子は博物館に行ったようで、彼女たちのもとへやってきたことがあるようです。 彼らの正体については今後の展開を見守りましょう。 『メイドインアビス』考察14:成れ果ての村とは?【8巻新情報】 レグと同じく「干渉器」だという存在から、異形の存在「成れ果て」たちが住む村はこう称されました。 「村は閉じた揺り籠だ 囚われれば価値は移ろい 憧れは果たされり 永遠の安寧の中で旅は終わる」 (『メイドインアビス』7巻より引用) 8巻ではこの村の成り立ちについて、ついに明かされました。 物語の始まりは、ヴエコという女性から。 ひょんなことから拾った羅針盤が「黄金協(アビスの大穴)」を指すもので、ガンジャという冒険団体に誘われた彼女。 そこでトップである「三賢」という立場をもらい、彼らと冒険することになりました。 その冒険者のトップ、三賢は、7巻でも立場のありそうな成れ果てとして登場した、ワズキャンとべラフです。 ある日、航海を経てついに大穴を見つけた彼ら。 その入り口で子供が生めないということで捨てられた少女イルミューイを見つけ、一緒に旅をすることになりました。 リコたちと同じく、アビスの厄難に見舞われましたが、ようやく黄金郷を見つけ、そこに滞在する一同。 しかし、やっと見つけた水が病気を引きおこすものだと分かりました。 団員たちは次々と倒れていきます。 そんなある日、一同は願いを叶えてくれる「欲望の揺籃」という遺物を発見します。 純粋で強い欲望が必要で、幼い人物であればうまく融合するということで、水によって瀕死だったイルミューイに望みをかけたところ、融合は成功しました。 しかし、彼女はどんどん異形になっていきます。 そしてある日、大きな叫び声をあげるのです。 ヴエコが急いで彼女のもとにいくと、そこには異形の赤ん坊を生んで喜んでいるイルミューイがいました。 しかし、赤ん坊は、翌日亡くなってしまいます。 それでも彼女は毎日赤ん坊を生みました。 そんなある日、ワズキャンがあることに気づき、行き詰っていた状況は一変します。 それは、イルミューイの生んだ赤ん坊を食べると、水による病気が治る、というものでした。 一度は水によって死にかけていたヴエコも、それによって生き返りました。 しかし目を覚ましてイルミューイのもとへいくと、彼女はかつての面影がまったくない、ただ赤ん坊を生むための道具になっていたのです。 さらに欲望の揺籃をもう1個体に入れられ、もはやこの姿が彼女の願いなのかも分かりません。 しかしまだまだ恐ろしいのは、水の病気が治るのは、生まれてすぐ、まだ生きている赤ん坊を食べなければならないということ。 ワズキャンは泣いて叫ぶイルミューイだったものから、無理やり赤ん坊を引き離します。 ヴエコは彼女ためにどうしていいか、もはや分かりませんでした。 そんなある日、イルミューイは大穴の中央に近い場所に向かいます。 そしてそこらにいた生き物を食べまくります。 それを見て彼女の赤ん坊を食べてしまうことに苦悩していたべラフは、何もかも食い散らかしてくれ、と叫びます。 彼の願いに呼応したイルミューイは、彼を取り込み、美しい「成れ果て」として生まれ変わらせるのでした。 そして一同は次々と彼女に取り込まれていきます。 大きくなったイルミューイこそが村で、かつて人間だった者たちがこの村の今の住人たちなのでした。 しかし、イルミューイの思いが途絶えたかというと、そういうわけではないようで……。 ちなみにこれまでの説明はかなり省きましたが、『メイドインアビス』の魅力である、繊細なのに、グロくて胸が苦しくなるようなストーリーが満載ですので、ぜひ読んでいただきたい展開です! 『メイドインアビス』考察15:ファプタの正体、目的は?【8巻新情報】 成れ果ての村の姫、ファプタ。 「価値の化身」であり、住人からは「自分たちが最も欲しくて最も恐れている」存在だと称されています。 実は彼女こそ、イルミューイが産んだ最後の子供。 イルミューイが子供を奪われ続けた恨みや悲しみを受け継いだ彼女は、村を滅ぼし、イルミューイを解放することを目的としています。 7巻で自分の頭の一部を何のためらいもなくちぎり取り、「いっしょに奴らを…根絶やしにするそす」と言ったのは、このような背景があったのでした。 そしてその目的をかなえるために、レグと何かを約束していたようなのです。 8巻でも明かされていないのが、レグとのつながり、そして約束です。 レグは断片的にしかファプタのことを覚えていません。 一方のファプタは彼のことを知っているようで、彼のお腹にいきなり自分の爪を差し込み、それを舐めて同じ味だと言って、過去に会ったことがあるとみなしています。 さらに何か思い入れもあるようです。 レグが人間であるリコたちと行動をともにしていることを聞いた時には恐ろしい表情になり、「おまえ…『ヒトのこ』とおなじじかん あゆむつもりか? あいつらしんでも おまえそのまま どうするつもりそす?」と聞き、悔しいのか、悲しいのか判別がつかないものの恐ろしい表情をして慣れ果ての言葉で何かつぶやきもするのでした。 9巻以降に期待ですね。 『メイドインアビス』考察16:ヴエコの正体【8巻新情報】 成れ果ての村の端には、誰も入らない領域「目の奥(ドグープ)」というところがありました。 そこで出会ったのが、「ヴエロエルコ」、通称ヴエコ。 住人たちが行くと精神的にダメージを負うという場所で粘膜のようなものにとらわれていました。 成れ果ての村の成り立ちを読んでいただいたら、もうこの人物が誰なのかはお分かりですよね。 三賢であり、この村の始まりを知っている、イルミューイ唯一の理解者です。 初めて出会った時、「どうしようもないと知っていたのに、村を作ることだけは反対し、それゆえに囚われた」と話していたヴエコ。 実はイルミューイが大穴の中央近くに来た時に死のうとしたのですが、ワズキャンに止められ、イルミューイの生存のために閉じ込められていたのでした。 7巻ではリコに聞かれ、自分の目的をこう答えました。 「自分はもう…ただ一つだけだよ… ただ あの子のことを忘れたくないだけ…」 (『メイドインアビス』8巻より引用) これまでのストーリーを知っている読者であれば、胸がとても痛くなる言葉です。 先ほどもお伝えしたように、8巻の内容をかなり省いて説明しているので、この言葉の背景やるせなさをお伝え出来ないのが残念。 ぜひ実際に読んでみてください……! 慣れ果ての村にやって来たナナチに、死んだはずのミーティの存在が知らされます。 「仮面の男が置いてったあたたかな呪いのかたまり」であり、「三賢のベラフ」が使っているというそれに、ナナチは会いにいきました。 かつて痛みで朦朧とした状態からリコが目を覚ました時、ミーティの存在を感じており、彼女とはまた会えるような気がすると言っていたことがありました。 そしてついに7巻では、三賢のベラフのもとにミーティがいることが判明します。 ストーリー上は死んでいたはずのミーティですが、ベラフは「対価を払い『イルぶる』に産んでもらった」と話しました。 そしてそこにいるのは記憶も魂も完全に一致している本物のミーティなのです。 ベラフはそれを得るために724本の手足すべて、体長の5割、感覚器の一部を永久に還元したと言います。 しかし、そこでまたしてもひどい扱いをされていた彼女のために、ナナチは自分を売ってしまいました。 ベラフにどんなひどいことをされるかも分かりません。 しかしこの展開で最も気になるのは、「イルぶる」という存在。 いくら対価を払ったからと言って、摂理に逆行するような力を持っていることが恐ろしいです。 今後ストーリーにどう関わってくるのでしょうか?.

次の